実験室で培養された奇妙な物質8選

 2012年に、京都大学の山中教授が、iPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新しいですよね。

 今や、実験室では、様々なものが培養出来るようになりました。しかし中には倫理的に問題のありそうな奇妙なものも培養され始めているのです。

 今回は、そんな実験室で培養された奇妙な物質を8つご紹介します。



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8. 豚の骨

(image..livescience.com)

 2016年に、アメリカの研究チームが、実験室で培養した骨を14匹のユカタン・ミニブタの成体に移植することに成功しました。移植手術後に拒絶反応を示した豚は1匹もおらず、培養された骨の内部の血管は、豚の体内の循環器系にぴったりと組み込まれたそうです。

 培養のために、まず、研究者たちは豚の下顎の骨をスキャンし、その構造を図にしました。そして、その図を基に、牛の骨から、細胞が中に入っていない、豚の顎の骨の枠組みを作りました。その後、豚の幹細胞をその枠組みの中に注入し、栄養たっぷりの培養液に浸したところ、豚の細胞から成る骨が出来上がったそうです。

7. 鼠の四肢

(image..npr.org)

 2015年に、マサチューセッツ総合病院の研究者チームが、実験室でネズミの前脚を培養したと発表しました。これが、世界初の手足の培養の成功例です。培養には、「脱細胞」という手順が用いられました。この手順は腎臓や肝臓等の培養でも用いられていますが、手足などの、複雑な器官の培養に応用されたのは初めてだそうです。

6.  ハンバーガーの肉

(image..qz.com)

 2013年にロンドンで、「合成肉」と呼ばれる、実験室で培養されたハンバーガーの肉がお披露目されました。この肉は、オランダ人で、血管生理学の教授であるマーク・ポスト博士によって生み出されました。

 博士の目標は、従来の食肉産業が行っているように、過度に動物たちを苦しめたり、環境を汚染したりすることなく、肉を作り出すことでした。5年の歳月と、約3,500万円の費用をかけて培養に成功した後、博士はモサ・ミートという会社を設立し、市場で合成肉を売り出すために研究を続けています。また、他社も自社の合成肉の開発に参入し、2016年に、サンフランシスコのメンフィス・ミート社がミートボール培養に成功しました。しかし、どの合成肉もまだ市場には出回っておらず、1番早くて、ハンプトン・クリーク社が、2018年までに発売することを計画しているそうです。

5. ヒトの細胞をもつ豚の胎児

(image..salk.edu)

 今年(2017年)1月に、アメリカのカリフォルニア州のソーク研究所やスペインのムルシア大学などの研究チームが、ヒトの細胞を持つ豚の胎児の培養に成功したという記事が発表されました。ソーク研究所では、既に小型のネズミの胎児内で、大型のネズミの膵臓や心臓、目などの器官を培養することにも成功しており、ある種の動物の器官が、別の種の体内で培養可能であることの証明になっています。

 この研究の目標は、移植手術に使えるヒトの全ての器官を、他の動物の体内で作り出すことです。しかし、このような、2種以上の異なるDNAを持つキメラの研究は、倫理的な問題も抱えています。一部がヒト、一部が動物という生物を作ることに抵抗を感じる人は少なくないでしょう。



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4. ネズミの精子

(image..sciencenews.org)

 2016年に、中国科学院の動物学研究所のキ・ジョーさんとシャオヤン・ザオさんが率いる科学者チームは、ネズミの幹細胞から生殖可能な精子を作り出したという研究成果を発表しました。

 この実験では、鼠から幹細胞を取り出し、新生児のネズミの精巣に入れ、幹細胞を、男性ホルモンの一種であるテストステロンや、脳下垂体から分泌される成長ホルモンなどの入った化学物質に晒しました。すると、2週間ほどで、普通の精子と同じ機能をもつ精子が出来たそうです。そして、それらの精子を注入した卵子をメスのネズミの体内に戻したところ、9匹の赤ちゃんが生まれ、そのなかの何匹かは、自身の子孫も残しました。通常の精子を用いた人工授精での成功率が9%に対して、今回の人工精子での成功率は3%でしたので、成功率はまだまだですが、この実験が、将来の不妊治療に役立つよう期待されています。

 ※ただし、他の研究者からは、この実験の成功を疑問視する声も上がっているそうです

3. リンゴで作った耳

(image..ctvnews.ca)

 2016年に、カナダ人生物物理学者のアンドリュー・ペリングさんと、オタワ大学の彼の研究チームが、リンゴを用いてヒトの耳を培養するのに成功しました。8番や7番の例でご紹介した通り、献体や動物を「脱細胞」して枠組みを作るのが一般的ですが、ペリングさんは、リンゴを使い、リンゴのセルロースだけを残して「脱細胞」しました。そして、「脱細胞」したリンゴを耳の形に切り出して枠組みを作り、そこにヒトの細胞を注入したところ、枠組み内で細胞が育ち、ヒトの外耳が出来たそうです。

 リンゴ等の植物を使えば、献体や動物を使うよりも安く、移植用の器官を培養することが出来ると期待されています。

2. ウサギの性器

(image..nc3rs.org.uk)

 2008年、ウェイクフォレスト大学の再生医療研究所のアンソニー・アタラ博士は、1992年から取り組んでいる研究の集大成として、ウサギのつがいの様子を見守っていました。と言っても、ただのウサギではありません。オスのウサギは、研究所で培養した男性器を持つウサギなのです。人工のペニスを移植された12羽のオスのうち、全てがメスと交尾し、8羽が射精に成功し、4羽に子どもが出来ました。

 その後、アタラ博士は研究を進め、2014年までに6つのヒトの男性器を人工的に作り上げることに成功しました。出来上がった器官は、毎日の生活での使用に耐えられるか、また、勃起する機能があるかを確かめるために、機械を使ってテストされています。博士は、5年以内に米国食品医薬品局の認可を取得し、人間への移植を実施したいと考えているそうです。



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1. 小型の脳

(image..wired.com)

 2013年、ネイチャー紙に、スタンフォード大学のセルジュ・パスカさんが、幹細胞から培養したヒトの脳組織を作ったと発表されました。その脳はわずか4mmで、本物の脳と違い、この小型の脳には血管も白血球もありませんし、10か月以上培養しても、大体3か月目の状態で成長が止まってしまったそうです。

 しかし、アストロサイトと呼ばれる非神経細胞は、研究室で培養された小型の脳の中でも順調に成長しました。アストロサイトは、神経細胞の生存と働きを助ける役割をしているため、ALS(筋萎縮性側索硬化症)等の神経疾患に関わっているとも言われています。この脳のさらなる研究によって、それらの神経疾患のメカニズムが解明されることが期待されています。

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